最近、米国では、内部告発という形で大きなリスクに踏み切ったところ、結果的に相応の金銭的対価を得る内部告発者も増えてきたということを書きましたが、最後まで金銭的対価を得ていない告発者というのもやはりいました。

ここでは、ミネソタのポンジ・スキームを暴いたタイ・スクロボーム氏(Ty Schlobohm)を紹介したいと思います。

タイ・スクロボーム氏(Ty Schlobohm)

FBI捜索に協力したミネソタの告発者タイ・スクロボーム氏

スクロボーム氏は、トレヴァー・クック氏(Trevor Cook)の推定1億6,000万ドル(約160億円)と言われるポンジ・スキーム解体で一役を買って「正義の味方」として有名になりました。

ポンジ・スキームというのは、詐欺の一種で出資金を集めた上で後からの出資金を先行した出資者に返還し最終的に破綻する仕組みの事を指します。

トレヴァー・クック氏も「外貨投資」「年利10〜12%」と称して2007年〜2009年の間に約1,000人から1億6,000万ドル(約160億円)を集め、集めた資金を先行して投資していた出資者に返還したり自身のギャンブルの借金返済に当てたりしていたとのことです。

トレヴァークック犯人

実刑25年が確定したポンジー・スキームを運営していたトレヴァー・クック主犯

スクロボーム氏は、投資銀行勤務で金融業界の知識が豊富だったためすぐにクック氏の投資スキームが実態のないものだとすぐわかったとのことです。

ポンジ・スキームであることの証拠を集めるためにスクロボーム氏は、ワイヤーを着用したり情報収集をしたりしながらFBIの捜索に協力していきました。時間を割く必要が出てきたため雇用主であるの投資銀行上司とも相談をした上で円満退社をし、2009年後半から本件に集中していたそうです。

その結果、十分な証拠が揃い、クック氏の逮捕が確定しました。

クック氏は逮捕されたものの1億6,000万ドルの内、2010年10月の段階で900万ドルしか回収ができておらず、投資家の被害は免れませんでしたが、さらに被害が拡大していたのを防げたと言えます。

最終的にクック氏は、郵送詐欺容疑と脱税容疑で懲役25年の実刑が確定し、事件は、終了したという経緯です。

スクロボーム氏は属していた組織を内部告発したわけではないので、厳密には、「内部告発者」というよりも「告発者」というのが的確ですね。

捜索協力で対価を得ていない理由は、ホイッスルブロワー関連の法律改正があったのが、事件後だったためです。

米国ドッドフランク法は、2010年の夏に改正され、その中には、内部告発者保護の姿勢を強める項目や投資詐欺の告発を促す項目がありました。

改正後の法案では、100万ドル超の資金回収分に関しては、S.E.C.やC.F.T.C.が30%を上限値として協力者に報酬を支払えるようになりました。その結果、「内部告発者は新しい賞金稼ぎ」とさえ言われるようになったというわけです。

しかし、スクロボーム氏の捜索協力は、法律改正前の2009年に発生したため対象外でした。

別途、米国国税庁の方のプログラム(回収された税金や追加徴税分から200万ドル以上の30%が対価として支払われる)には該当する可能性があるということがわかり、現在、専門の弁護士とIRSに打診中との事です。

「報酬をもらえるのであれば、嬉しい。だけど、そのために行ったわけじゃない。」

「目の前の人たちを助けられるチャンスだと思った。」

とスクロボーム氏は語っています。

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